経審のX1点(完成工事高)とは?評価の仕組みと業種振り分けのポイントを解説【三重県版】


はじめに

経審(経営事項審査)のP点(総合評定値)の中で、X1評点(完成工事高)は比重25%と最も影響が大きい評点のひとつです。しかし「売上と完成工事高は同じでいいの?」「どの工事をどの業種に入れればいいか分からない」という相談は少なくありません。

この記事では、完成工事高とは何か・計算方法・業種振り分けのルール・実務でよく止まるポイントを三重県の手引きをもとに解説します。

完成工事高とは

完成工事高とは、建設工事が完成しその引渡しが完了したものについての最終請負額(または工事進行基準により収益計上する場合における期中出来高相当額)です。

会計上の「売上」とは必ずしも同じではありません。建設工事の請け負い以外の業務(保守点検・測量・設計・草刈り等)は「兼業売上」となり、完成工事高には含められません。

JV(共同企業体)工事の場合:甲型JV(共同施工方式)はJV全体の完成工事高に出資比率を乗じた額、乙型JV(分担施工方式)は分担した工事額となります。出資比率を超える額は計上できません。

X1評点の計算方法

X1評点は、申請する業種ごとの年間平均完成工事高を以下のテーブル表(手引き表13より抜粋)に当てはめて算出します。年間平均は直前2年平均または直前3年平均のどちらかを選択します。

年間平均完成工事高 点数の計算式
5億円以上 6億円未満 25×完成工事高÷100,000+793
4億円以上 5億円未満 34×完成工事高÷100,000+748
3億円以上 4億円未満 42×完成工事高÷100,000+716
2億5,000万円以上 3億円未満 24×完成工事高÷50,000+698
2億円以上 2億5,000万円未満 28×完成工事高÷50,000+678
1億5,000万円以上 2億円未満 34×完成工事高÷50,000+654
1億2,000万円以上 1億5,000万円未満 26×完成工事高÷30,000+626
1億円以上 1億2,000万円未満 19×完成工事高÷20,000+616
8,000万円以上 1億円未満 22×完成工事高÷20,000+601
6,000万円以上 8,000万円未満 28×完成工事高÷20,000+577
5,000万円以上 6,000万円未満 16×完成工事高÷10,000+565
4,000万円以上 5,000万円未満 19×完成工事高÷10,000+550
3,000万円以上 4,000万円未満 24×完成工事高÷10,000+530
2,500万円以上 3,000万円未満 13×完成工事高÷5,000+524
2,000万円以上 2,500万円未満 16×完成工事高÷5,000+509
1,500万円以上 2,000万円未満 20×完成工事高÷5,000+493
1,200万円以上 1,500万円未満 14×完成工事高÷3,000+483
1,000万円以上 1,200万円未満 11×完成工事高÷2,000+473
1,000万円未満 131×完成工事高÷10,000+397
完成工事高は千円単位で計算。点数に小数点以下の端数がある場合は切り捨て。5億円以上の区分は手引き表13をご参照ください。
評点 計算の基礎 算出機関 P点への比重
X1 業種ごとの年間平均完成工事高 三重県 25%
X2 自己資本額・平均利益額 三重県 15%
完成工事高と元請完成工事高は別に管理:X1は完成工事高全体、Z評点のZ2は元請完成工事高が基礎になります。工事経歴書には完成工事高と元請完成工事高を区別して記載する必要があります。

2年平均と3年平均の選択

直前2年平均または直前3年平均のどちらかを選択できます。ただし以下の制約があります。

選択のルール

2年平均・3年平均の選択に関する制約

  • 全業種で同じ選択をしなければならない:業種ごとに2年平均・3年平均を選ぶことはできません。すべての審査対象業種で同一の方法を使います。
  • 完成工事高と元請完成工事高で異なる計算基準を選択することはできない:両方同じ基準(2年または3年)を使います。
  • 毎年どちらが有利か確認する:大型工事があった年が含まれる方を選ぶと有利になります。前年または前々年の実績を確認してから選択してください。
決算期変更をした場合:事業年度に含まれる月数が24か月(または36か月)に満たない場合は、按分計算が必要です。

業種への振り分けルール

1つの請負契約に係る建設工事の完成工事高を2つ以上の業種に分割または重複して計上することは原則できません。

基本ルール

業種振り分けの考え方

  • 1工事=1業種:原則として1つの工事は1つの業種にしか計上できません。
  • 発注業種を確認する:公共工事の場合、どの業種に該当するかは発注機関が定めます。不明な場合は発注機関に確認してください。
  • 工事経歴書との金額一致:各審査対象業種の完成工事高は、工事経歴書(様式第二号)の合計金額と一致しなければなりません。

専門的工種の内訳記載について

土木一式工事・とび・土工・コンクリート工事・鋼構造物工事を申請する場合、それぞれの内訳として「プレストレストコンクリート構造物工事」「法面処理工事」「鋼橋上部工事」の完成工事高を実績の有無にかかわらず必ず記載する必要があります(実績なしの場合は「0」)。なお、これらの内訳工事の完成工事高は合計に算入されません。

業種間積み上げ

経営事項審査を受けない業種の完成工事高を、その工事の内容に応じて経審を受ける業種の完成工事高に含めて申請することができます(平成29年10月決算期以降の業者から適用)。

積み上げの利点:例えばとび土工・舗装の工事を主に行いながら土木一式の許可も持っている場合、これらの専門工事の完成工事高を土木一式に積み上げることで、土木一式のX1評点を大幅に引き上げることができます。土木一式での公共工事入札を強化したい場合に有効な手段です。
積み上げの方向 積み上げ元(受審しない業種) 積み上げ先(受審する業種)
専門→土木一式 とび土・石・タイル・鋼構造物・鉄筋・舗装・しゅんせつ・水道施設・解体 土木一式工事
専門→建築一式 大工・左官・とび土・タイル・屋根・鋼構造物・鉄筋・板金・ガラス・塗装・防水・内装・建具・解体 建築一式工事
専門⇔専門 電気⇔電気通信 管⇔水道施設 とび土⇔石 とび土⇔造園

▼ 積み上げ前(各業種で別々に経審受審)
とび・土工
完工高 3,000万円
経審受審
舗装
完工高 2,000万円
経審受審
土木一式
完工高 10,000万円
経審受審
↓ とび・土工・舗装の完工高を土木一式に積み上げ申請(別記様式第1-2号)
▼ 積み上げ後(経審申請)
とび・土工
受審できない
舗装
受審できない
土木一式(経審申請)
完工高 15,000万円
(3業種合算)
⚠ 「積み上げ元」の業種は経審を受審できなくなります。一度実施した積み上げは同審査基準日での取り消しができません。

積み上げの主な注意点:

①「積み上げ元」となる業種は経審の申請ができなくなります。その業種は結果通知書発送日以降、公共工事の入札に参加できなくなります。

②積み上げ元の一部のみを積み上げることはできません。当該業種の完成工事高全体を積み上げてください。

③2年または3年すべての事業年度で積み上げを行う必要があります。特定の事業年度だけ積み上げることはできません。

④一度積み上げで受審した後、同審査基準日において積み上げなしの状態に戻すことはできません。

完成工事高の分割分類

一式工事で請け負った工事を、その内訳に応じて専門工事の完成工事高として分割して申し出ることができます(別記様式第1-1号による申出が必要)。

分割分類の利点:土木一式・建築一式で受注した工事の中に専門工事の内容が含まれる場合、その部分を専門工事の完成工事高として計上できます。専門工事業種のX1評点を引き上げたい場合に有効です。例えば土木一式で請け負った道路改良工事の中のとび土工・舗装部分を、それぞれの専門業種のX1評点に加算できます。

▼ 分割前(工事経歴書上の完成工事高)
土木一式(工事経歴書)
5億円
X1評点の基礎
内訳↓
とび・土工:3億1,046万円
舗装:6,400万円
土木固有分:1億4,554万円
↓ 別記様式第1-1号で分割分類を申出(特定の請負工事単位で適用)
▼ 分割後(経審申請時の完成工事高)
土木一式
1億4,554万円
(分割後の残額)
とび・土工
3億1,046万円
(土木一式から移行)
舗装
6,400万円
(土木一式から移行)
合計は変わりません(1億4,554万円+3億1,046万円+6,400万円=5億円)。土木一式の金額が減り、その分がとび土工・舗装のX1評点に加算されます。
⚠ 一度分割分類した工事は翌年度以降に元に戻すことができません。積み上げとは異なり業種単位ではなく特定の請負工事への適用です。

計上できない業務

以下の業務は建設工事の請け負いに該当しないため、完成工事高・元請完成工事高に計上できません。これらはすべて「兼業売上」です。

  • 街路樹の枝払い・剪定・樹木等の冬囲い
  • 維持業務における伐開・草刈・除土運搬・除雪業務・路面清掃・側溝清掃
  • 建設資材の賃貸・仮設材などの賃貸
  • 委託契約における設備関係の保守点検のみの業務
  • 工作物の設計業務・工事施工の監理業務
  • 地質調査・測量調査
  • 建売分譲住宅の販売
  • 浄化槽清掃・施肥等の造園管理業務
  • 炭坑の坑道掘削や支保工・造林事業・苗木の育成販売・造船
兼業売上が含まれていると:審査で確認された場合、事業年度終了届の修正や経営状況分析の再申請が必要になります。また当日の審査が完了しなくなることもあります。

よく止まるポイント

止まりやすいポイント①:売上と完成工事高を同じにしていた

税理士が作成した決算書の「完成工事高」にそのまま記入するケースがありますが、兼業売上が混入していないか・税抜きで作成しているかを確認する必要があります。

止まりやすいポイント②:複数業種にまたがる工事の振り分けで迷った

電気・管・機械器具設置など複数の業種が絡む工事は、どの業種に計上するかの判断が難しいケースがあります。公共工事の場合は発注機関の業種区分を確認してください。

止まりやすいポイント③:工事経歴書の金額と契約書の金額が合わない

審査当日に照合されます。上位3件の契約書・注文書と工事経歴書の金額を事前に照合し、付箋などで整理しておいてください。

止まりやすいポイント④:工事経歴書の記載要領が決算変更届と経審で異なる

経審では、元請として請け負った工事を金額の多い順に7割を超えるまで記載してから残りを記載するという独自の記載要領があります。決算変更届で提出したものがそのまま使えない場合があります。

事前に知っておきたいこと

完成工事高は「完成・引渡しが完了した工事」が対象です
完成工事高として計上できるのは、建設工事が完成しその引渡しが完了したものの最終請負額です。ただし工事進行基準により収益計上している場合は、完成・引渡し前でも期中の出来高相当額を計上できます。その場合、工事経歴書の「請負代金の額」欄に完成工事高を括弧書で付記する必要があります。
値引き・前受金・自社物件は計上できません
完成工事の値引額・未成工事における前受金・自社物件の建設は完成工事高に含められません。
契約後VEの特例があります
契約後VE(施工段階での技術提案による契約額縮減)による公共工事については、縮減前の契約額で評価する特例が利用できます。利用する場合は縮減額が証明できる書類が必要です。

当事務所でできること

🏛 行政書士髙橋大輔事務所(三重県鈴鹿市)

「どの業種に計上すればいいか分からない」「積み上げを活用したい」という段階からご相談に応じます。工事経歴書の作成・業種振り分けの整理から申請まで、トータルでサポートいたします。

初回のご相談・お見積りは無料です。お気軽にお問い合わせください。

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まとめ

基本
完成工事高は「引渡し完了した建設工事の最終請負額」。売上・兼業売上とは異なる
1工事は原則1業種のみ計上。工事経歴書の合計金額と一致することが必要
注意点
草刈・除雪・保守点検・設計・測量等は計上不可。兼業売上が混入すると審査当日に問題になる
積み上げは一度実施すると同審査基準日での取り消しができない
対策
工事ごとに業種・金額・引渡日・元請区分を記録し、決算後すぐに整理する習慣をつける
2年平均と3年平均はどちらが有利か毎年確認して選択する

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【免責事項】本記事は三重県建設業課発行の公式資料(令和8年4月版)をもとに一般的な情報提供を目的として作成しています。法的助言を提供するものではありません。個別の事情により手続きや結果が異なる場合がありますので、具体的なご相談は専門家にお問い合わせください。
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