はじめに
経審(経営事項審査)を受けたはいいが「思ったより点数が低かった」「どこを改善すればいいか分からない」という悩みを持つ方は少なくありません。P点は5つの評点(X1・X2・Y・Z・W)のバランスで決まります。売上だけ増やしても点数が伸びないのは、他の評点で点数を落としているためです。この記事では、評点ごとの改善ポイントと優先順位を三重県の手引きをもとに解説します。各評点の詳細は個別記事にリンクしていますので、あわせてご確認ください。
点数改善の考え方
P点は5つの評点の加重平均です。まず結果通知書で各評点の数値を確認し、どの評点が他と比べて低いかを把握することが改善の第一歩です。
P = X1×0.25 + X2×0.15 + Y×0.20 + Z×0.25 + W×0.15
| 評点 | 何を見るか | 比重 | 改善の難易度 |
|---|---|---|---|
| X1 | 完成工事高(工事の実績) | 25% | 売上規模に依存。短期改善は難しい |
| X2 | 自己資本額・平均利益額 | 15% | 利益の積み立てで中長期的に改善 |
| Y | 経営状況(財務の健全さ) | 20% | 財務改善が必要。中長期的な取り組み |
| Z | 技術力(技術職員・元請実績) | 25% | 講習更新は短期対応可。資格取得は中期 |
| W | 社会性等(保険・建退共など) | 15% | 保険加入・建退共加入は短期対応可 |
X1(完成工事高)とZ(技術力)がそれぞれ比重25%と最も高く、この2つの改善がP点に最も直結します。ただし、W(社会性等)は社会保険未加入があると大きな減点になるため、まず保険の完全加入を確認することが先決です。
X1(完成工事高)を上げる
X1評点は申請業種ごとの年間平均完成工事高で決まります。売上規模が直接反映される評点です。詳細は「経審のX1評点(完成工事高)とは?」をご覧ください。
改善ポイント
X1を上げるために意識すること
- 元請工事を増やす:X1は完成工事高全体ですが、元請工事を増やすとZ2(元請完成工事高)にも反映されるため一石二鳥です。
- 2年平均か3年平均かを確認する:直前2年平均または3年平均のどちらかを選べます。大型工事があった年が含まれる方を選ぶと有利です。全業種で同じ選択をしなければならないため、どちらが全体的に有利か確認が必要です。
- 業種の振り分けを整理する:複数業種をまたぐ工事は、振り分け方によって各業種のX1に影響します。業種間積み上げや分割分類の活用も検討してください。
X2(自己資本・利益)を上げる
X2評点は自己資本額の点数(X21)と平均利益額の点数(X22)の平均で決まります。詳細は「経審のX2評点(自己資本額・平均利益額)とは?」をご覧ください。
改善ポイント
X2を上げるために意識すること
- 利益を社内に積み立てる(X22改善):平均利益額は「営業利益+減価償却実施額(利払前税引前償却前利益)」の2年平均です。毎年の利益を過大な役員報酬や配当で外に出さず、社内に残すことが基本です。
- 自己資本を増やす(X21改善):純資産合計の額が基準です。利益を積み立てることで自己資本も増えます。
- 基準決算と2期平均を比較する:自己資本額(X21)は当期末または2期平均を選択できます。どちらが有利か確認して選んでください。
- 節税と経審のバランスを意識する:税務上の節税(役員報酬増加・経費前倒し計上等)は営業利益を減少させX22に影響します。決算前に税理士と相談してください。
Y(経営状況)を上げる
Y評点は8つの財務指標で決まります(民間の登録経営状況分析機関が算出)。短期間での改善は難しく、中長期的な取り組みが必要です。詳細は「経審のY点(経営状況)とは?財務指標の仕組みと改善のポイント」をご覧ください。
改善ポイント
Y評点を上げるために意識すること
- 借入利息を減らす(純支払利息比率aの改善):8指標の中でaの寄与度が29.9%と最も高い指標です。不要な借入の整理が最も効果的です。
- 本業の利益を出す(売上高経常利益率dの改善):経常利益を増やすことで複数の指標が同時に改善します。工事の粗利改善・経費削減が直結します。
- 利益を積み立てて自己資本を増やす(f・hの改善):自己資本比率・利益剰余金ともに毎年の利益留保で改善します。
- 決算前に税理士と相談する:Y点は決算書の数値で決まります。申請直前では改善できないため、決算前からの財務戦略が重要です。
Z(技術力)を上げる
Z評点は技術職員数の点数(Z1)×0.8 + 元請完成工事高の点数(Z2)×0.2 で求めます。技術職員の比重が80%と大きいです。詳細は「経審のZ点(技術力)とは?」をご覧ください。
改善ポイント
Z評点を上げるために意識すること
- 1級資格者を増やす(Z1改善):1級資格者は5点、2級は2点と差が大きいです。2級保有者の1級取得を支援することが直接Z1に反映されます。
- 監理技術者講習を更新する(6点確保):1級資格者が監理技術者講習を受けることで5点→6点になります。講習は受けた年の翌年から5年間有効です。期限が切れると自動的に1点下がるため、技術職員ごとに期限管理が重要です。
- 元請工事の実績を増やす(Z2改善):Z2は元請完成工事高で決まります。下請のみでなく元請工事を増やすことでZ2が改善します。
- 技術職員の常勤性を維持する:常勤でない(6か月を超える恒常的な雇用関係がない)人は計上できません。採用・退職の管理を年間通じて行ってください。
W(社会性等)を上げる
W評点は保険加入・退職金制度・建設機械の保有など、会社の社会的な取り組みを総合的に評価します(W1〜W8の合計×10×175/200)。詳細は「経審のW評点(社会性等)とは?」をご覧ください。
改善ポイント
W評点を上げるために意識すること
- 社会保険の完全加入を最優先(W11〜W13):雇用・健康・厚生年金保険の未加入は1項目につきW1内で×40点の大幅減点です。まずここから対応してください。
- 建退共に加入する(W14):加入でW1内に+15点。比較的取り組みやすく効果が大きい項目です。
- 法定外労災上乗せ保険に加入する(W16):3要件(通勤災害含む・下請業者も対象・死亡〜障害等級7級対象)を満たすものに加入することでW1内に+15点。
- 退職金制度を導入する(W15):中退共・確定拠出年金等の導入でW1内に+15点。
- CCUSで就業履歴を蓄積する(W110):全工事で実施でW1内に+15点、全公共工事で実施でW1内に+10点。
- 若年技術者・技能者の育成(W17):35歳未満の技術職員割合が15%以上でW1内に+1点、新規採用1%以上でさらに+1点(合計最大2点)。
- 建設業経理士の登録を維持する(W52):1・2級登録建設業経理士の数に応じてW5に加点。登録講習を5年に1度受講していることが条件です。
- 法令遵守に注意する(W4):建設業法第28条による指示処分を受けるとW4で-15点、営業停止処分でW4で-30点の減点になります。他の項目で積み上げた点数が一気に消えるため注意が必要です。
- 研究開発費(W6):会計監査人設置会社で無限定適正意見または限定付き適正意見を得ている場合のみ対象。一般の中小建設業者には該当しないケースがほとんどです。
どこから手をつけるか
すべてを一度に改善することは難しいため、優先順位をつけることが重要です。
未加入があるとW1内で×40点の大きな減点になります。他の加点項目をどれだけ積み上げても打ち消されます。まずW評点の足を引っ張る項目をなくすことから始めてください。
講習期限切れは6点→5点に即座に下がります。技術職員ごとの期限を一覧管理し、期限切れ前に受講してください。
加入手続きは比較的すぐできます。各W1内で+15点と効果が大きい項目です。
2級から1級への昇格で1人あたり2点→5点に増加。資格取得には時間がかかるため早めに計画を立てることが重要です。
Y点の改善は財務改善そのものです。毎年の決算前から税理士と相談しながら中長期で取り組む必要があります。
事前に知っておきたいこと
前回高かったからといって今回も同じとは限りません。技術者の退職・工事実績の変化・財務内容の変化などで毎年点数が変わります。毎年結果通知書で各評点を確認する習慣が重要です。
効果が複数の評点に波及する対策から優先すると効率的です。代表的な例を挙げます。
| 対策 | 影響する評点 | 内容 |
|---|---|---|
| 元請工事を増やす | X1・Z2 | 完成工事高全体が増えるとともに、元請完成工事高も増加する。完成工事高評点と技術力評点の両方に波及するため最も効果が広い対策のひとつ。 |
| 毎期の利益を社内に積み立てる | X2・Y | 営業利益の増加により平均利益額が改善。利益剰余金の蓄積により純資産が増加し自己資本額も改善する。また経営状況評点の純支払利息比率・自己資本比率・利益剰余金も同時に改善する。 |
| 借入を減らす | X2・Y | 負債の減少により純資産比率が改善し自己資本額に好影響。経営状況評点の純支払利息比率・負債回転期間・自己資本比率の3指標が同時に改善する。 |
| 社会保険に完全加入する | W・Z | 未加入解消で社会性等評点の大幅減点がなくなり、社会性等評点が大きく改善する。また社会保険の加入は技術職員の常勤性確認書類にも関係するため、技術力評点の計上漏れ防止にもつながる。 |
| 技術者の1級資格取得を支援する | Z・X1 | 1人あたりの技術職員数値が2点→5点に増加し技術力評点が改善する。また1級取得者は監理技術者として元請工事に専任できるため、元請工事の受注機会が増えて完成工事高評点・元請完成工事高の改善にも波及する。 |
Y点(財務)や技術者の1級資格取得は短期間では改善できません。「今年の申請に間に合わせる」と「来年以降に向けて取り組む」を分けて考えることが重要です。
社会保険未加入(W1)・法令違反(W4)・民事再生法等の適用(W2)はいずれも大きな減点になります。加点に目が向きがちですが、まず減点要因がないかを確認してください。
当事務所でできること
「どこを改善すればいいか分からない」「どの評点で点数を落としているか知りたい」という段階からご相談に応じます。結果通知書の内容を確認しながら、改善できる項目を一緒に整理します。
初回のご相談・お見積りは無料です。お気軽にお問い合わせください。

