はじめに
経審(経営事項審査)のP点(総合評定値)を構成する5つの評点のうち、Y点(経営状況の評点)は財務内容を評価する唯一の項目です。しかも算出するのは三重県ではなく民間の登録経営状況分析機関で、他の評点とは仕組みが大きく異なります。
この記事では、Y点が何を見ているのか・8つの財務指標の読み方・改善の方向性を解説します。P点全体の仕組みについては「経審のP点(総合評定値)の仕組みとは?」もあわせてご確認ください。
Y点の重要性
P点(総合評定値)は、経審の「最終的な点数」です。5つの評点を組み合わせて計算します。
P = 0.25×X1 + 0.15×X2 + 0.20×Y + 0.25×Z + 0.15×W
Y点はこの5つのうちの1つで、比重は20%です。「Y点が高い=P点が高い」ではなく、残り80%の評点(X1・X2・Z・W)も同時に改善しないとP点全体は伸びません。
| 評点 | 何を見るか | 比重 | 担当機関 |
|---|---|---|---|
| X1 | 完成工事高(工事の実績) | 25% | 三重県 |
| X2 | 自己資本額・平均利益額 | 15% | 三重県 |
| Y | 経営状況(財務の健全さ) | 20% | 登録経営状況分析機関(民間) |
| Z | 技術力(技術職員・元請実績) | 25% | 三重県 |
| W | 社会性等(保険・建退共など) | 15% | 三重県 |
Y点はどうやって計算されるか
Y点は、三重県ではなく国が認定した民間の登録経営状況分析機関が算出します。経審を受ける前に、民間機関に先に申請して結果通知書を取得しておく必要があります。
計算の流れは次の通りです。
決算書(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書等)をもとに、a〜hの8指標を算出する。
8指標に係数を掛けて合計した「経営状況点数(A)」を計算する。
A = -0.4650×a -0.0508×b +0.0264×c +0.0277×d
+0.0011×e +0.0089×f +0.0818×g +0.0172×h +0.1906
※小数点以下2位未満の端数は四捨五入
経営状況点数(A)を以下の計算式に当てはめてY評点を求める。
Y = 167.3 × A + 583
最高点:1,595点 最低点:0点 ※小数点以下の端数は四捨五入
8つの財務指標の読み方
Y点は8つの財務指標で決まります。それぞれ「何を見ているのか」「どの方向に改善すればよいか」を理解しておくことが重要です。
| 記号 | 指標名 | 計算式 | 寄与度 | 上限値 | 下限値 | 改善の方向 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| a | 純支払利息比率 | (支払利息-受取利息-受取配当金)÷売上高×100 | 29.9% | 5.1% | -0.3% | 借入利息を減らす・売上を増やす(数値が小さいほど有利) |
| b | 負債回転期間 | (流動負債+固定負債)÷(売上高÷12) | 11.4% | 18.0ヵ月 | 0.9ヵ月 | 借入・買掛金を減らす・売上を増やす(数値が小さいほど有利) |
| c | 総資本売上総利益率 | 売上総利益÷総資本(2期平均)×100 | 21.4% | 63.6% | 6.5% | 売上総利益を増やす・総資本を減らす(数値が大きいほど有利) |
| d | 売上高経常利益率 | 経常利益÷売上高×100 | 5.7% | 5.1% | -8.5% | 経常利益を増やす・無駄なコストを削減する(数値が大きいほど有利) |
| e | 自己資本対固定資産比率 | 自己資本÷固定資産×100 | 6.8% | 350.0% | -76.5% | 自己資本を増やす・固定資産を減らす(数値が大きいほど有利) |
| f | 自己資本比率 | 自己資本÷総資本(2期平均)×100 | 14.6% | 68.5% | -68.6% | 自己資本を増やす・借入を減らす(数値が大きいほど有利) |
| g | 営業キャッシュフロー | (経常利益+減価償却実施額-法人税等±各種増減額)÷1億(2年平均) | 5.7% | 15.0億円 | -10.0億円 | 本業で利益を出してキャッシュを増やす(数値が大きいほど有利) |
| h | 利益剰余金 | 貸借対照表の利益剰余金÷1億 | 4.4% | 100億円 | -3.0億円 | 毎年の利益を積み重ねて内部留保を増やす(数値が大きいほど有利) |
Y点を上げるための方向性
Y点の改善は財務内容の改善そのものです。短期間では難しく、中長期的な取り組みが必要です。
効果が出やすい順
Y点改善の優先順位
- 借入を減らして利息負担を軽くする(a改善):純支払利息比率はa〜hの中で寄与度が最も高い(29.9%)指標です。不要な借入を整理するだけで効果が出やすい項目です。
- 本業の利益を増やす(d・g改善):売上高経常利益率と営業キャッシュフローは収益性の指標です。工事の粗利改善・経費削減が直結します。
- 利益を社内に積み立てる(h改善):利益剰余金は毎年の利益を留保し続けることで改善します。配当や役員報酬を過大にしていると積み上がりにくくなります。
- 自己資本比率を高める(e・f改善):純資産を増やす・借入を減らすことで改善します。h(利益剰余金)の改善と連動します。
Y点だけ高くてもP点は伸びない
財務内容が良くてもP点が期待より低いケースがよくあります。原因はほとんどの場合、Y点以外の評点(特にZとW)で点数を落としているためです。
財務は良い(Y点は高い)→ しかし技術者が少ない(Z点が低い)・社会保険未加入がある(W点がマイナス)→ P点全体は低い
どの評点で点数を落としているかを把握して、優先順位をつけて改善することが大切です。
確認ポイント
結果通知書で確認すべき項目
- 結果通知書に記載されているY・Z・Wの各評点の数値を確認する
- どの評点が他と比べて低いかを把握する
- Z点が低い場合→技術者の資格取得・講習更新・採用から着手する
- W点が低い場合→まず社会保険の完全加入(未加入は×40点)を優先する
- Y点が低い場合→借入の整理・利益の積み立てを中長期で取り組む
事前に知っておきたいこと
申請時点でできることはほとんどありません。Y点を上げたいなら、決算が確定する前から財務改善の取り組みを始める必要があります。
前年好調でも、今年赤字・借入増・自己資本減少があればY点は下がります。毎年の決算後に結果通知書で確認することが重要です。
三重県ではなく、国が認定した民間の登録経営状況分析機関に申請します。三重県への申請より先に結果通知書を取得しておく必要があります。機関によって手数料・処理日数が異なるため、余裕をもって申請してください。
当事務所でできること
「どの評点で点数を落としているか分からない」「Y点を改善したいがどこから手をつければいいか」という段階からご相談に応じます。結果通知書の内容を一緒に確認しながら、改善できる項目を整理します。
初回のご相談・お見積りは無料です。お気軽にお問い合わせください。

